2011年12月29日木曜日

日本で女性のダイバーシティを考える上での基礎資料3つ

今年の4月頃から、女性のダイバーシティマネジメント支援団体のJ-Winの企業メンバーとして、他の企業からいらしている方々と共に活動しています。
活動に当たり、基礎知識がないので折に触れて勉強するようにしていたのですが、私の見た限り、下記の3点があれば相当量はカバーできるように思いましたので、備忘録代わりに書いておきます。

1. 「論争 日本のワーク・ライフ・バランス」山口 一男、樋口 美雄編

2007年のRIETI政策シンポジウム「ワーク・ライフ・バランスと男女共同参画」の内容を基にした本。背景、問題点、解決案、根拠がコンパクトにまとまっていて大変素晴らしい。他にも何冊か見たが、日本の現状を知るにはこの本1冊を読むのが一番良いと思う。
以下、面白かった点を順不同で箇条書き。
  • 現在の「男女共同参画」はあくまで、従来の画一的な男性の働き方に女性を合わせようとしている措置で、ニーズとギャップがある
  • 差別されると知っている者は自己投資のインセンティブを失い、逆に優遇されると知っている者は自己投資のインセンティブを増す。結果として優遇される人が自己投資により生産性が高くなり、最終的に差別が合理的かのような結果を生む(コートとラウリーの理論)
  • 夫の労働時間(通勤時間含む)が短く、家事分担率の高い世帯の方が妻の就業率も、2人目以降の出産希望率も高い
  • ワークライフバランス推進により業務内容の見直しが行われることで生産性が高まり、企業収益が向上する企業が増えている
タイトルこそワーク・ライフ・バランスだが、「多大な訓練費用をかけて育てた熟練者の夫をこき使う代わりに専業主婦の妻ごと養う」という従来モデルが強固にある日本において、それと違うバランスを認めることについて議論するということは、結局ダイバーシティについて話をしているに等しいと思う。

2. "Women Matter", McKinsey

最新版は 1,500 人の世界中のビジネスリーダーへの調査を基に作成。経年で見ていくこともできるかもしれないけれど、各回フォーカストピックが違うように思える。例えば Women Matter 3 (2009年) などは、女性リーダーが男性より優れている点とそうでない点を比較しており興味深い。

ちなみに McKinsey Quarterly には Women & Leadership というセクションもある。

3.Gender Equality and Development Department, OECD

日本と海外の比較の統計が出されるときはたいてい「OECD調査」と書いてあるように思う。どこの資料も「OECD調査」としか書いていないが、おそらく上記の部門の調査だと思われる。

おまけ:日本での「技術系」女性のダイバーシティ

ちなみに私はJ-Winでは「技術系分科会」というところに入っているのですが、内永ゆかこ理事長によれば、男性と女性で考え方が違うだけではなく、技術系の女性とそうでない女性でさらにまた違うそうです。抱えている問題は似ているが、問題へのアプローチ方法が全然違うのだとか。
この点に関しては Society for Women Engineers などの資料などを読めばあるのかもしれませんが、また、情報工学分野の場合は IEEE Women in EngineeringACM-W の資料に何かあるかもしれませんが、まだ勉強が足りていないので何とも言えません。

また、これも内永理事長が仰っていたのですが、昇進も「ゼネラルマネージャーは今後のポテンシャルを考慮されるが、技術系はこれまでの成果を評価される」と違いがあるとか。これによって、研究開発系は他の職種よりアファーマティブアクションを効かせづらくなっているようです。
今の職場も、私が今まで働いてきた企業・部門の中では一番多様性があるように思いますし、私にとってはとても居心地もいいのですが、そもそも数が少ない中で採用基準を変えない、ということですから、女性エンジニアの採用には苦労している模様です。

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